チュマ

『そういうふうにできている/さくらももこ』感想

2024/8/18

はじめてさくらももこさんの本を読んだ。語り口がなんとも絶妙で好きになった。

いかに妊娠が出産が辛いか、という武勇伝が語られているに違いないと思っていたのだが、実際はそうでもなくて、ごくごく自然な自分の感情の変化やらが書かれていてとても好感を持った。

ネットに転がっている出産レポをよんでいると、読んでて恐ろしくなるようなものが多い。「ああいうのは自分の体験を大げさに言いがちだから」と産婦人科の先生の言葉が何かに書いてあったけど、まぁ「なんともありませんでした」「意外と痛くありませんでした」というレポートより、いかに辛く痛いか、が書かれている方がつい見てしまうもんな。

だから、さくらももこさんの本は、怖がらせるために書いたような本じゃなくて安心したし、楽しく読めた。もちろんマタニティブルーや不安については、大変だよなぁと思ったけれど。

あと、本を読んでいると「ああこういうことを考えちゃうのは私だけではなかったのだな」と仲間を見つけたみたいで安心することがよくある。今回の本は妊娠・出産のエッセイだったけれど、途中「脳・心・魂」についての考えが書かれていて、とても面白かった。ついでに巻末でもビートたけしさんとの対談でもこの話題について話されてて、「なんだなんだ、みんなおんなじか」と思った。

そういうふうにできている

タイトルを見た時から思っていたけれど、なんだか励まされる言葉で、好きだ。

「出産の痛みに耐えられるだろうか?」
「母親として一人の人間をそだてられるだろうか?」
「どんな性格でどんな顔の子どもでも、受け入れて愛情深く育てられるだろうか?」

そんな不安は尽きないのだが、人間はどうやらそういうふうにできているらしいのだ。違う本にも「自分の産む力を信じろ」と書いてあった。なんだかますます自分がまるで動物のような、ありふれた妊婦の一人であると思えて仕方ないが、事実その通りなんだろう。

すこ~し寂しいような、でも安心するような言葉を、またお守りとして出産・育児に立ち向かいたいと思う。

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