産後のお守りにしたい『きみは赤ちゃん/川上末映子』感想
多分今マタニティーブルー中で、漠然となにもかも不安で、だけど幸せな気持ちも確かにある。そんな何とも言えない今、この本を手に取った。妊娠から産後一年の間のエッセイ。読み終えた感想は、率直に、赤裸々に綴ってくださって、本当にありがとうございます。
出産編はとにかく共感の嵐だった。乳首を触り続けるとかは、わからなかったけれど。とくに、「夫婦の危機とか、冬」はありがたかった。
“「その気になれなーい」のはあべではなく、つ ね に わ た し でないとならなかったのだ!”
まさにそうだった。夫から求められ、しぶしぶ応じるが、それでもやっぱりだめだよ、と私が断るところまでがセットでないといけない。それが私の描いていた妊娠中の夫婦像。
ところがどっこい、現実はな~んにも求めてこない夫。もちろんラブラブなカップル期間はとうに過ぎ、夫への恋心は愛情に変わった。でも今までレスになったことはなかった、こんなに長く性生活が行われなかったことがなかった。しかし夫に聞いてみても、とくに我慢をしているわけではなさそう。なんてことなさそうなのだ。だから余計不安になった。そうしてイライラして、ご機嫌ナナメになっていった。
お腹は見たことないくらい大きくなったし、お尻も太ももも、ミチミチになった。身体が変わっていく。夫からは求められないし、私って今いったい何なの?これから何になるの?女じゃなくて母になるのか。そんな不安が間違いなく私にもあった。そして、この本のおかげで私だけじゃないんだ…と少し安心することができた。
産後編は、これまた壮絶で、未知の世界への恐怖と楽しみで複雑な気持ちになった。「仕事か育児か、あらゆるところに罪悪感が」では、なんとなくわたしも同じことを考えそうだと思った。
保育園に預けていいのか?このかけがえのない時間を一分一秒見逃してはならないのではないか?そんな葛藤、想像に難くない。でも、わたしは仕事が苦手だから、余計に悩むのか、逆にすがすがしく専業主婦を全うするのか。わからない。産後編は、ぜひまた読み返したい(果たしてこんな壮絶な産後にそんな余裕があるのかわからないけれど)
妊娠、出産っていうありふれていそうで、しかし到底当たり前なんて言葉では片づけられない出来事。そして何も変わらぬ夫との新しい夫婦関係。これから自分の身に今まで体験したことのないようなことが起こる。壮絶であろう日々。でも自分の生きがいとも思えるような存在との出会いが待っているかもしれない、そんな日々。
ああ一体どうなってしまうんだろう。安心するわけでも、恐怖が増したわけでもない、でもこの本はお守りとして持っておきたいなと思った。そんな本でした。
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「きみは赤ちゃん」川上末映子